Recollection

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Recollection Vol.1 あとがき


ノザキハコネ

 はじめまして。あるいはお久しぶりです。このたびはえみー氏から誘っていただいて参加することになりました。素敵な機会をありがとうございます。

 私が寄稿した作品『暗闇をおそれる者のおとぎ話』は友人がかつて執筆した『ふたりのハードプロブレム』の設定やキャラクター像を拝借して書かせていただいた二次創作的な作品です。原典を知らない人にも楽しんでいただけるよう、知っていればなお面白く読めるように書いたつもりですがいかがでしたでしょうか。

 執筆の経緯としては以前友人との雑談の中で生まれた「ロボットが宗教を獲得するという事態もあるのではないか」という思いつきが原点にあります。私は理工系に非常に疎いのですが意識の実在性とかクオリア問題だとかのテーマには最近妙に関心が出てきて、これらの題材にもっと取り組んでみたい欲が出てきています。なお仕事は遅い。

『Recollection』は定期刊行を目指しているそうですので、私ふくめてこれからもよろしくお願いします。


絵空つぐみ

 この度はお手に取っていただきありがとうございます。はじめましての方ははじめまして、お久しぶりの方はお久しぶりです、起きて寝言をいう絵空つぐみです。近況はというとひたすらアプリの「スヌーピーのもぐもぐレストラン」を進めつつデアゴスティーニの「つくってあつめるスヌーピー&フレンズ」を組み立てしているので、なんというかスヌーピー狂いに拍車が掛かっている有様です。あとFFのピクセルリマスターをバンドルで全部買って実績コンプしたりとかしてます。物書きから遠ざかるばかりですね。

 さて、Recollection vol.1収録作の「錆色のねずみ」、自分にしか見えない錆色の生物たちと渋々お付き合いしながらご近所トラブルをマジカルパワーで解決していく退魔ネコミミ系女子高生のキャッキャウフフな話、お楽しみいただけましたでしょうか。お楽しみいただけたならよかったですね……いえ、最初はそんな感じの話になる心づもりだったんです。なんやかんやこね回していたら某文豪の「女生徒」から影響が入りましてこんな感じになってしまいました。大変不思議なことですね。表紙にネコミミさんがいるのはそれとは無関係ですが実は眼福であります。

 錆色の生き物が何を表しているのか、ペーパーでくらい弁解しておきますと、新しさとか若さとかそういったフレッシュそうな概念を食べる存在というつもりで書いています。だから物体は平等に食べられ、彼女はあのとき大きく食べられ、彼女は小さく食べられたわけですね。これから「わたし」が幸せになれるのか不安になるような締めでしたが、あのくらいの年齢って失敗を意外と大したことないなって学んでいく頃だと思うので、たぶん数年後にはけろっと人生を謳歌しているんじゃないかと思います。賢い子だ。

 ともあれ今回は久しぶりの執筆ということもあって大変新鮮な気持ちでやることができました。主宰のえみーさん、またご一緒した皆様、改めてありがとうございます。また機会がありましたらぜひご一緒しましょう。


如月真弘

 「山本五十子の決断・外伝 南海の花束」執筆を終えて

 まず、この合同誌を手にとって初めて「山本五十子の決断」をご覧になるという方へ。

 本作品は、人類が海水に拒絶反応を示す環境で唯一例外である一〇代の少女達が海軍乙女として活躍する世界で、時は我々の知るそれと酷似した世界大戦、少女達を通じて史実の海軍軍人達の長所も短所も含めた魅力そして生き様を知って欲しいという願いをこめて平成二六年に書き始めた美少女架空戦記ライトノベルです。小説家になろう・カクヨムで平成二八年に完結したWEB版及び平成二九年~平成三〇年に書籍化したファンタジア文庫版一巻二巻がミッドウェー海戦、平成三一年にMC☆あくしずBOOKSから発売した三巻「山本五十子の決断 燦」がWEB版・ファンタジア文庫版のその先の戦いを描いた物語とすれば、この「外伝・南海の花束」は開戦前夜からマレー沖海戦までを描いた前日譚で、本編より先に読んで頂いて問題ありません。もしお気に召したなら、WEB版でも本でも電子書籍でも、本編を探し求めて頂ければ幸いです。

 普段親近感を覚えにくい、遠い歴史上の人物の意外な楽しいエピソード、お茶目だったりドジなところ、けれどそんな人達が過酷過ぎるあの時代に直面し、何を口にし、どのように生きたのか、そのどちらも精一杯伝えたい。歴史と戦争という重いテーマをエンターテイメントにする責任を感じつつ、もともと歴史に詳しくなかった方々が、この作品に出会い五十子達の生き様に涙してくださり歴史に興味を持ったと聞くたびに、歴史小説でなく敢えてライトノベルを書いた意味があったという喜びを新たにします。

 「山本五十子の決断」を既にご存じの方へ。この外伝はファンタジア文庫版二巻発売を記念して平成三〇年にWEBで一話のみ公開しましたが、その後三巻の書き下ろし作業を優先して止まってしまっていたもので、大変長らくお待たせし、本当に申し訳ありませんでした。

 当初、この外伝に五十子はじめ本編の登場人物は一切登場しない予定でした。三巻で登場する小澤智里のお披露目を主目的に、冒頭でマレー沖海戦、二で開戦前のサイゴンからコタバル上陸、三でマレー沖海戦当日のブリトン視点と、本編未登場だった智里含め全て新キャラで進め、当時もう五十子の物語はやりきったと感じていたのと、この世界に新しい物語を書く余地がこれだけあるとアピールする狙いでした。

 ですがその後、ファンの方々とお話していて、皆さん五十子とレギュラーメンバーをもっと見たいのだと痛感し、私自身、山本五十子のまだ書けていないエピソードがありましたので、考えを改め、開戦前夜の帝都での五十子と嶋野の会話、岩国での連合艦隊最後の作戦会議の場面など五十子とレギュラーメンバーの前日譚を大幅に増やさせて頂きました。

 新キャラも出しています。第二艦隊の近藤中将は、史実において三国同盟に賛成し政治的に山本五十六と相容れず、小澤も戦前の夜間訓練の事故をめぐって近藤と遺恨がありましたが、近藤も決して無能ではなく最前線で活躍した武闘派なので、実力者として描きたいと思いました。あまり長く登場させられなかったのが残念です。人間には色んな側面があります。辻政信(そのまま)については、美化しないよう彼の問題点がはっきりわかるようにしつつ、「絶対悪」とする考えには組せずに功罪のバランスに注意して書いたつもりですが、いかがだったでしょうか。前日譚なので、レギュラーメンバーの描き方についても本編との違いを感じられるかもしれません。

 渡辺寿子と黒島亀子は既に連合艦隊司令部に馴染んでいますが、後から来た宇垣束はこの時まだ浮いています。史実の宇垣纒が参謀長らしく振る舞うようになって山本五十六と打ち解けるのは、ミッドウェー海戦の惨敗で黒島亀人がパニックになる時まで待たないといけません。それまで、連合艦隊司令部に宇垣の居場所は無く、司令部の皆で料亭に行くのでも、宇垣だけ違う店といった状態でした。ミッドウェー海戦は、山本が宇垣の部屋に行ったり、宇垣の仕留めた焼き鳥を食べて喜んだりするようになり、山本は死ぬ前に宇垣に刀を贈って、宇垣はその刀を持って特攻しています。私の作品では、宇垣束が皆と打ち解け積極的に作戦に協力するようになったのは、主人公の洋平が現れたからです。

 嶋野は、いつもより性格が丸く見えるかもしれません。WEB版の嶋野はもっと毒がありました。書籍化に伴いファンタジアの方針で嶋野をライバルヒロイン化したことや、私自身、三巻でへるにゃーさんの描いて下さったどちらかというと穏やかな嶋野の顔を見続けた影響かもしれません(笑)。ただ、WEB版の嶋野も五十子がいないところでは陰湿な嫌がらせをしますが、五十子のことは同格な上に国民的人気があるので恐れているところもあり、内心で憧れや嫉妬を持っているところもあり、五十子本人に向かっては嫌味は言っても直接攻撃はしませんでした。また、今回の嶋野は、開戦が決まってかなり上機嫌です。五十子が開戦反対なのは当然知っていて、嶋野なりの正義もあるとはいえ、いわば五十子に対する最大級の嫌がらせに成功したわけですから。それでも、ここで同期の絆の象徴である養命酒を贈るのは、嶋野なりの愛情表現だなと書いていて感じました。

 井上が嶋野の悪口を言うところ、史実ではここで山本五十六は「嶋さんはオメデタイんだ」と答えていますが、五十子は敢えて言わず、代わりに「今更誰が良い悪いと言っても始まらない」と答えています。これは史実で五十六が同期で親友の堀悌吉にあてた手紙の一節です。

 嶋野の史実エピソードは永野軍令部総長と嶋田海軍大臣を融合しています。日付変更線を忘れて「奇襲は月曜日だから週の始めで米軍は疲れている」と陛下に上奏してしまったのは永野軍令部総長です。一方で、もし山本五十六が連合艦隊司令長官を辞めてしまうと、中央に戻ってこられると困ると思っているのは同期の嶋田海軍大臣です。嶋田は「東條の男妾」と揶揄されていましたが、陛下への忠義で戦争回避しようとして陸軍内でも孤立していた東條総理を物資の要求で急かすことで無自覚に追い詰めてしまいます。

 岩国の最後の作戦会議で、中止になっても途中で帰れないという南雲達に山本五十六が激怒する史実エピソードは、当初、史実そのままに五十子が怒り、あの優しい五十子がそこまで追い詰められていたというシーンにしようとしていましたが、よく考えて、史実通り怒りますが、その後すぐに自分を取り戻し、史実の五十六の言葉だけでなく自分の言葉でフォローを入れるようにしました。五十六ではない、五十子だからこそです。史実だと五十六が怒り皆黙って終わりですが、五十子がフォローしたから、その後の草鹿峰の言葉に繋がります。

 ここは洋平のまだ来ていない、放っておけば皆が史実通りに振る舞い破滅へ向かっていく、閉じた世界です。五十子の言う「天命」「定め」というのは五十六が堀への手紙で嘆いたそのままの言葉です。だからといって全てが史実通りな必要は無く、そうでないと史実と違う少女達にした意味が無いですから、洋平が来る前から、何かきっかけさえあれば変わる下地はあったということですね。

 コタバル上陸は、ラ・メール症状のある世界でどうやって男性兵の上陸作戦をやるのかという読者からの疑問に答えるシーンで、正直、こういう世界なら縄梯子で移乗は難しく、神州丸のような揚陸艦がもっと発達している気もしますが、そこは今までのルールで史実通りの輸送船にしました。「燦」のマッカーサーのガダルカナル上陸は史実に無いフィクションなので、捕鯨船を揚陸艦代わりにしましたが。この世界の上陸作戦が陸戦隊の少女達の犠牲の上に成り立つことはお見せできたと思います。

 「プリンセス・オブ・ウェールズ」は、WEB版・ファンタジア文庫版の時からこの艦名なので踏襲しました。この世界ならではということで、ご想像にお任せします。

 後は、今回は商業本ではないので、いかに合法的に登場人物に飲酒させるかにこだわりました(笑)。フランスは未成年の飲酒を禁止しておらず、養命酒は当時薬として子どもにも飲ませていたそうです。

 今回、合同誌に誘ってくれて素晴らしい挿絵を描いて下さったえみーさんには感謝してもしきれません。また、私達を出会わせてくれた、SF作家であり稀代の陶芸家であったボレロ村上さん(村上原野さん)には、生前大変お世話になりました。今回の作品には、彼への追悼の気持ちも込めました。

 そして、応援して下さった皆様、母はじめ家族、遠いところ文学フリマの会場を訪れて下さり合同誌を手に取って下さった全ての方に心から御礼申し上げます。

 武漢で発生し昨年から本邦で猛威をふるうようになった新型肺炎禍で私の本業の飲食店も大きな打撃を受けまして、休業を繰り返しているので時間ができたように思われるでしょうが、実際には、新しく次々と降ってくる私の一存ではどうすることもできない諸問題に振り回されて忙殺され、店の人手も減っていったので仕事は増えていき、また、時間はあっても精神的に疲弊して、一時は小説が書けなくなりました。

 ファンの方々や、幼い頃から応援してきてくれた母に申し訳ないと思いつつ。WEB版を書いていたサラリーマン時代は、どんなに忙しくても合間合間に時間を見つけて小説を書くのが楽しくて、生きる喜びだったのですが……。純粋に創作することが楽しかったあの頃に戻れたらと思いながら、日々新しく辛い出来事が起こる本業で心身がいっぱいいっぱいで。

 先述の村上さんは、書籍化前から「山本五十子の決断」を応援してくれて、私の創作意欲を支えてくれていた方なのですが、去年くも膜下出血で急逝してしまわれショックでした。ですから、今回の合同誌の呼びかけには本当に救われました。

 参加を決めてからも、七月にまた仕事で大きなトラブルが発生し、これも急に上から降って湧いたことで私の一存ではどうすることもできなかったのですが、民事上の紛争に数か月忙殺され、その渦中で刑事事件……私個人には全く非の無いことで逆恨みされ暴行される被害にもあい警察や検察とのやり取りもあって、体調不良も重なり危ないところでしたが、皆さんの支えで何とか書ききることができました。

 締切を何度も延ばさせてしまい、えみーさんにはご迷惑をおかけしました。でもおかげで、書いている間に、歯車にたまっていた土埃が落ちていくような、書く楽しさを思い出していく感覚がありました。これを機に、「山本五十子の決断」以外のプロット止まりや書き途中の新作も含め、また頑張りたいです。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

 令和三年一一月二三日
 如月真弘


藤山えみー

はじめまして。
当サークルぽんこつ代表+裏方の藤山えみーです。

 まずは表紙絵の猫耳娘、このこはこれからも何かと出てくるかも、な看板娘的キャラで、異世界でひとりぼっち読書を続けてる生活をしてる設定です。 今回はこっそり、ハドプレ世界のアンドロイド二次元コード・錆色どうぶつヘアピン・春香の純白のリボンを付けてたりします。二次元コードはマジックで書いているらしい。強火ファンなのでしょう。名前はまだない。

 私自身のお話になりますが、幼い頃から絵を描いていなかった時期がないのではという位、絵は私の人生と切り離せないものです。幼少のころから習っていた●文式の教材が嫌で嫌で、プリントの隅に美少女戦士を描くのが癒しだったり、逃避でもありました(当時はやってもやっても学年上のプリントやらされたので終わりが見えなかった)。小学生の頃は場面緘黙児(特定の環境で発声ができなくなる症状)で、絵を通してしか友達とコミュニケーショできなかった時期もありました。それが今や、自分から誰がしかに呼びかけて絵を描く事で人と繋がりを持てているのですから、すこし感慨深いですね。

 裏方的なことが好きなので、フリーゲーム制作でタイトル絵を描かせて頂いたり、ボカロ初期頃はPさんの動画に絵を描いたり、2009年頃から創作文芸サークル『準備室』さんの合同誌の表紙・挿絵を描く担当をしていました。

 この頃は予備校になじめず辞め進学も将来も諦め、何年もほぼ引き籠ってた時期だったので、私の描く絵で人と繋がれる、その当時の嬉しさ楽しさはかけがえのないものでした。また初心を味わえたら良いな、とかお気に入りの作家さん集めた合同誌作れたら夢だなあとか、割とワガママな設立理由だと思ってはいます。

 今までは、人に誘われ指示と資料頂き…等とお膳立てしてもらって描く事ばかりだった為、それでは自分から動いてみたらどうだろう?と思い立ったのもあります。筆を止めてしまった作家さんにまた一作でも多く書いてほしい…という思いも。あと文学フリマ愛が深いのも大きい…!

 文学フリマは、"自分が文学と信じるもの"であれば何でもござれなスタンスが良いですよねえ。お婆ちゃんになっても参加したいな~ってくらいにはすきです。

 Vol.1が完成し、できたてサークルRecollectionはここからどういった方向性でやっていくのか…?など課題も見えてきました。今後とものんびりとやっていきたいと思いますので、よろしければ当サークルを見守ってやってくださると嬉しいです…!